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竹林を有効利用して、新型コロナウイルスから人類を守るための提案―中国における竹林利用の成功例の紹介―

中国における竹林利用の成功例

前回、我国の竹林を有効利用するだけで一次産業が再生出来る可能性に対する私案を述べたが、これが単なる絵に描いた餅ではないことを中国の例で紹介しよう。日本竹炭竹酢液協会を立ち上げた後、当時在籍していた京都大学木質科学研究所に中国からの留学生であった南京林業大学の張敏君の紹介で浙江省にある浙江林学院の張斉生教授に出会い、彼の招請で中国での竹炭・竹酢液の指導をすることになった。
主に浙江省遂昌県を中心とする地域の竹資源を用いて製炭の技術を指導したのであるが、我国同様中国人も竹を炭に焼くという考えを持っていなかった。この地域は、昔から炭を焼いていたので、中国式の製炭技術は確立されており、炭焼き窯も炭焼きも多かったので比較的簡単に私の提案が受け入れられ、一挙に竹炭生産が始まった。
私が指導するまでは、中国の炭焼きさん達も、炭は燃料にするものと決めてかかっていたようであるが、「竹炭・竹酢液の持っている機能を商品化しなければならない。」という私の提案は短期間で見事に受け入れられた。これは、世界中で活躍している華僑でも分かるように、中国人の商才、商機を捉える天性の才能かも知れない。浙江林学院で行なった最初の講演会には500名以上の参加者があったが、その中で新華社通信の記者が参加していた。彼は私の講義を聴いた後、炭焼きに転じ、竹炭会社を立ち上げた。正に、“機を見るに敏”である。その中でも際立って抜きんでいたのが文照竹炭の陳文照君である。彼は親子三代にわたる炭焼きであったが、私に一番協力的で積極的だった。
2010年、彼からの連絡で、「竹炭博物館」を作ったので、見に来て欲しいとの連絡を受け、出掛けることにした。文照竹炭の社内にささやかに作られた物だろうと思いながら、現地についてみると写真に示すような正に奈良の大仏殿と見まごうばかりの壮麗な建物であった。僅か10年足らずで、たかが炭焼きと世間では思う人物がこれほどのものを作ったのである。博物館の周辺には、竹炭・竹酢液関連の物産館、食堂、ホテルまで建設されていた。その折行われた式典では、当時の中国共産党書記長の江沢民の妹で江沢慧、現代の中国のトップである当時国家副主席であった習近平も参加していた。我国では考えられないことである。
式典の後行われた講演会では、私がトップで壇上に上がることになった。彼等が私から受けた恩義を重んじてくれたことに感動した。翻って、我国を見たとき、人を利用するだけのあまりにも心貧しい連中ばかりで我国の行く末に暗澹たる思いをしたものである。

その後の中国の現状

2010年の中国における感動から10年後の現代の中国の現状はどうだろうか。その後、習近平が指導者になった途端、アメリカに追いつき追い越すために物質文明主導に方向転換し、ファーウエイの例で見られるように2010年から僅か10年足らずで国家主導の成果が表れたように見受けられる。しかし、中国の現状を見ると、我国がアメリカの主導で物質文明を推し進めた同じ手法を取り入れているため、一時的な繁栄は得られるであろうが、近い将来国家を震撼させる大問題が発生するであろう。今回の新型コロナウイルスの医療関係者の対応にその予兆が見られる。物質文明を基本とする医療体制をそのままフェイクしてしまったことが如実に表れている。2010年の遂昌県での地場産業としての竹炭産業の発展とは全く異なる形態になってしまっているのである。
国を挙げて、「竹炭・竹酢液の機能を商品化する。」というテーマを深化させることを続けておれば、今回の新型コロナウイルスへの竹酢液の機能をいち早く用いることが出来たはずであるが、何とも残念至極である。

これまで述べてきたことでご理解いただけたと思うが、無能な指導者が現れることによる恐るべき弊害を一般の人々が熟知し、このような指導者が現れたら直ちに排除するシステムを作っておかなければならないのであるが、人類の歴史ではこのシステムのほとんどが権力者側で作られてきたのである。これを変えなければ大げさに言えば、人類は地球上の全ての生命を道連れにして滅亡することになるであろう。
新型コロナウイルスの影響で、世界中の株価下落を補てんするために、日銀が世界中の銀行に3兆4000億円の資金提供をするという報道を見たが、恐るべき無能さである。これまで、株安による世界経済恐慌は幾度となく繰り返されているが、経済が回復しているのを見ても、株が経済を支えているのではないことに何故気が付かないのだろうか。経済を支えているのは実際に真面目に働き、生産に携わっている人々であるということに。日銀が提供するドル紙幣はただの紙切れであり、株屋のためのバーチャルリアリティーのものであるが、これは産業連関を生まない。コロナウイルスは増えることでパニックを起こすが、株価は減ることでパニックになる。「株」という資本主義によって生み出されたある種のウイルスは実経済に対する寄生虫の様なものであろう。実経済が発展すると株ウイルスは増大し、実経済を食いつぶすことで消滅する。
前回提案した竹林資源の有効利用によって生み出される3兆9700億円は産業連関によって、最低でもその20倍、79兆4000億円に達するのである。竹林の有効利用が私たちにとって途方もない恩恵をもたらせてくれるのである。
現代人は、いつまでも愚かなことを繰り返すのではなく、新型コロナウイルスからの警告を真摯に受け止め、経済のパラダイムチェンジ、ノヴァパラダイムを構築する時期に来ていると思われる。