· 

懲りずに続ける(Ⅳ)その3

竹酢液のはたらき

さて、いよいよ竹酢液のはたらきについて話を進めて行こう。そもそも、竹炭や竹酢液が世に出るきっかけになったのは、東北テレビで高名な評論家である草柳大蔵さんとの竹談義の中で竹炭や竹酢液の効用について、これまで民間で経験的に使われている話をしたことに端を発している。その折、自分が伝聞したことや、実際に自分の腰痛に竹炭を試してみたり、我家のダックスフントが皮膚の発疹に苦しんでいるのに竹酢液を用いるとうそのように治まることなど、自分で実際に確かめていたからであるが、草柳さんの知名度も加わって、竹炭、竹酢液の機能を強烈にアピールする結果となった。テレビの影響力は恐ろしいもので、このおかげで竹炭、竹酢液のブームは東北地方から始まったのである。
それまでは、従来通り燃料に使ったり、工芸炭として、土産物の花生けの花瓶にして細々と売られているに過ぎなかった。このようなことでは産業にもならないし、荒廃しつつある竹林の再生の役にも立たないので、竹炭、竹酢液の機能を商品化することの仕掛けをしたのであるが、これが見事に当ったと言えるだろう。しかし、その一方で、あっというまに魑魅魍魎が金儲けの手段として使い、インチキな連中が50㏄の竹酢液を5千円、1万円で売り出したのには唖然とするばかりである。
2000万人とも言われるアトピー性皮膚炎に苦しむ人々やペットの動物たちが少しでも安らいでくれたらと、しかも竹炭、竹酢液を世に出すことで関連産業が活性化される一助になればと、研究者の立場からすれば軽薄の誹りを受けることを顧みず話したことが見事に利用されたのであるから世の中は恐ろしいところだと実感した。
とはいえ、その後、5歳のころからステロイド剤を使い続け、そのリバウンドとアトピーの再発に苦しんできた女性が見事に治癒したり、心ある医者があちこちで治療に使い始めたのを見聞すると、一石を投じた意味があったのだろうと自分を慰めている。
前置きが長くなったが、本題に入ろう。木酢液については歴史も古く農業、工業、特に食品加工業や、第1号の対談の中で岸本先生が話しておられた霊元素アトムのように、医薬品としてなど多方面での利用が考えられてきた。もっぱらの利用は、農業用の成長促進剤、農薬および土壌改良材として三枝さん達がいろいろ研究されたようであるが、品質が安定しなかったり燃料革命による炭の需要の落ち込み、農薬や化学肥料との競争に勝てずあまり日の目を見ることがなかった。
最近になって、環境問題がかしましく取り上げられるようになって、再びクローズアップされるようになってきたようだが、これまで述べてきたように、多成分系の複雑な材料であるからよほど腰を落ち着けて研究しないと、従来の要素還元論的手法ではものにならないであろう。
効果の大小は別として、竹酢液のはたらきは木酢液と同様に考えればよいと思われるが、特定の効果についてはこれまでの公の研究機関、研究者側の対応ぶりから見てあまり期待できないので、それぞれの立場で必要とする人が自ら研究を進めていくしか方法はなさそうである。
本稿では、竹酢液に対して多くの人々の興味の中心であるアトピー性皮膚炎の消炎効果と糖尿病における血糖値の低減効果について、専門ではないが研究者の一人として既知の情報を援用しながら推論を進めてみたい。これをきっかけとして、多くの専門家たちが真摯に研究に取り組んでいただき、一日も早くアトピーや糖尿病の苦しみから患者を解放して頂ける一助になれば幸いである。

(続く)